マイクロソフトは、iPhoneが登場するまでWindows CEやWindows Mobileといったスマートフォンの分野で(主にビジネスマン向けに)大きなシェアを持っていた。Windows Phoneでは、これまでのWindows Mobileプラットフォームを一新し、Visual Studioに強力なWindows Phone開発機能を導入している(高度なIntelliSenseのサポートや、高速なエミュレータの起動、扱いやすいデバッグ機能など)。また、アプリ開発ガイドやアプリ配布プラットフォームの整備を行い、開発者が魅力的なアプリを開発しやすい環境を提供している。
●開発者視点で見たプラットフォームごとの比較
実際に開発を行っていくうえでは、開発環境や開発におけるガイドライン、アプリ配布用のマーケットプレイスなどの環境がどれだけ整備されているかが1つの鍵となる。表3に各プラットフォームの比較を示す。
WindowsPhone7 | Android | iPhone/iPod/iPad | |
デザインガイドライン | 規定あり | 規定あり | 規定あり |
ハードウェア規定 | 規定あり | 規定なし | 規定あり |
開発環境 | Visual Studio | Eclipse | Xcode |
開発言語 | C#、VB (Visual Basic) | Java、C++ | Objective-C |
開発者ポータル | App Hub | android Developer Center | iOS Dev Center |
アプリ配布 | Marketplace | Android マーケット、そのほか | App Store |
実機動作時の開発者登録 | 必要 | 不要 | 必要 |
企業内配布 | 検討中 | 独自配布 | あり |
表3 スマートフォン・プラットフォームの比較 |
どのプラットフォームにも得手不得手があるが、Windows Phoneはソフトウェアのガイドラインを示したり、ハードウェア規定を設けたりすることで端末ごとの違いを少なくしている。また、開発環境に目を向けると、Windows開発者としては使い慣れたC#やVBを利用して開発できるのはうれしいポイントだろう。
企業での利用を考えると、企業内配布の制度をすでに整えているiPhone勢が一歩抜け出ているが、Windows Phoneも企業内配布を検討中ということで期待が持てる。
●統合開発環境の整備
スマートフォンの開発では、作成したアプリをパッケージにまとめたり、作成したアプリをエミュレータや実機に転送したり、実機を使ったデバッグのためにコンパイル・オプションを変更したりと、いくつか面倒な作業がある。このため、実際の開発では、単純にビルドするだけでなく、開発に必要な一連の機能がそろった統合開発環境を簡単に利用できるかは気になる点だ。
Windows Phone Developer Toolsをインストールすると、Visual Studioのほかに、XNA Game Studio、Windows Phoneのエミュレータ、Expression Blendといったツール類も同時にインストールされる。Windowsの開発者としては、ダウンロードしてきたインストーラを実行すれば、使い慣れたVisual Studioなどの環境で、そのままWindows Phoneの開発が行えることは喜ばしい。
ただし、現在は日本語に対応したWindows Phoneがリリースされていないこともあり、Windows Phoneの開発環境も、日本語版のVisual Studioに完全には対応していない。
日本語版のVisual StudioでWindows Phoneの開発を行いたい場合は、Windows Phone Developer Toolsをインストールした後に、次の手順でVisual Studioの再構成を行う必要がある。
なお、本作業はマイクロソフトが正式にサポートする方法ではないため、各自の責任で行ってほしい。
○1. プロジェクト・テンプレートをコピー
「%ProgramFiles(x86)%\Microsoft Visual Studio 10.0\Common7\IDE\ProjectTemplates\CSharp\Silverlight for Windows Phone」以下に「1041」フォルダを作成し、そこに「1033」フォルダの内容をコピーする。
○2. アイテム・テンプレートをコピー
「%ProgramFiles(x86)%\Microsoft Visual Studio 10.0\Common7\IDE\ItemTemplates\CSharp\Silverlight for Windows Phone」以下に「1041」フォルダを作成し、そこに「1033」フォルダの内容をコピーする。
○3. Visual Studioを再構成する
コマンド・プロンプトを管理者として実行し、「%ProgramFiles(x86)%\Microsoft Visual Studio 10.0\Common7\IDE\」に移動して、以下のコマンドを実行する。
> devenv.com /setup
以上の作業を行うと、あらかじめインストール済みの日本語Visual Studioで、Windows Phoneの開発が行える。
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