2011年5月26日木曜日

富士通、1台2役の「Windows 7ケータイ」を披露

 富士通は2011年5月26日、NTTドコモが6~7月に発売する予定の携帯電話「Windows
7ケータイ F-07C」の報道関係者向け説明会を開いた。F-07Cは、その名の通り、Windows
7がそのまま利用できる携帯電話。NTTドコモからは5月16日に発表があったが、開発元の富士通が改めて詳細を説明した。

 「"コンパック・ショック"を受け、当社のパソコンも独自アーキテクチャからグローバルなDOS/Vアーキテクチャにシフトしたが、その時と同じくらいの潮目の変化ではないかと考えている」――。同社執行役員副社長の佐相秀幸氏は、現在のIT業界の状況をこう表現する。高機能化した携帯電話やスマートフォンがパソコンと同様の存在感を示し、その境目がなくなりつつある今、パソコンの位置付けや方向性を見つめ直す時期に来ている。米コンパック・コンピュータ(当時)が低価格なDOS/V機を発売し、国内のパソコン市場に大きな変化をもたらした1990年代前半と似た状況というわけだ。

 「本日はパソコン部隊からの発表だが、中身は携帯電話の部隊と融合した組織で作っている。この大きく変化する潮流を、パソコン部隊が必ず乗り越える、という意志の表れだ。一緒にやっているからこそ生まれる価値がある。それが新しい潮流、境がなくなったプラットフォームにきちんと対応していく原動力となる。」
 F-07Cの特徴をひと言で表せば、「ケータイとパソコンのいいとこ取り」(同社執行役員兼パーソナルビジネス本部長の齋藤邦彰氏)。iモードの携帯電話としての機能に加えて、パソコンと同じWindows 7が動く点である。F-07Cは
「FMV LOOX」というモバイルパソコンのブランド名も冠しており、同社では「世界最小の手のひらサイズパソコン」と位置付ける。だからといって、携帯電話としての機能を省いたり、パソコンとしての機能を制限したりはしていない。

 オフィスソフトは「Office Personal 2010 2年間ライセンス版」をプリインストールし、パソコンと同様にWord、Excelを利用可能。Webブラウザーは最新版の「Internet Explorer 9」を搭載し、パソコンと全く同じよう
にWebを閲覧・活用できる。「パソコンとして一切妥協せず、むしろ最先端の技術を使っている」(同氏)というこだわりようだ。別売の「クレードルセット」に接続すれば、USB端子に周辺機器を接続して使ったり、HDMI端子で外部ディスプレイに出力することも可能。キーボードやマウス、ディスプレイをつなげば、超小型のデスクトップパソコンのように利用できる。

 一方で「ケータイとしても一切の妥協はしていない」といい、おサイフケータイはもちろん、iモードメール、iチャネル、iコンシェル、ケータイデータお預かりサービスなど、「ドコモのサービスには全て対応している。セキュリティもケータイと同じレベル。さらに富士通ケータイならではの技術も充実している」(同氏)としている。

 携帯電話としての機能とWindows 7パソコンとしての機能は、側面にあるボタン1つで切り替えられる。両者は全く別物として動いており、CPUもそれぞれ別に用意されているという。もちろん、Windows 7を使っているときでも、電
話がかかってくれば着信音が鳴り、電話に出ることができる。そして通話が終わると再びWindows 7に戻る。携帯電話として使っている間は、Windows 7はスリープや休止状態
に入り、無駄な電力消費を抑える。なお、SDカードを媒介とすることで、両者の間でデータを共有することはできる。

 実際に製品に触れてみると、その小さな画面でWindows 7のメニューやボタンをタッチして操作するのは、やはり難しいと感じた。文字入力に関しては、スライド式のキーボードを搭載するので、慣れれば問題なさそうだが、WordやExcelで文字の書式を変更するときなど、小さなボタンをタッチして選択するのは難しい。しかし、キーボード右手にある「トラックボール」を使えば、比較的正確にマウス操作が行える。トラックボールとキーボードの使い勝手に慣れれば、そこそこ快適に使えるかもしれない。ただし、Windows 7を動作させたときのバッテリー駆動
時間は約2時間と短いので注意。バッテリー残量が低下すると、Windows 7のモードが終了して携帯電話のモードに切り替わり、携帯電話としてのみ利用できる状態になるという。

 説明会にゲストとして登壇した日本マイクロソフト代表執行役社長の樋口泰行氏は、「潮目が変わっているという指摘があったが、Windows上で動くソフトウエア資産はたいへんな資産だ。それを有効活用できるプラットフォーム、しかもそれがケータイという位置づけの中でパソコンの機能を有しているということで、非常に画期的な、新しいポジションの製品」と語り、Windowsの資産を携帯電話の上で活用できるメリットを強調。その技術についても「まさに日本の"匠の技"であり、海外のメーカーではできないような緻密で良い出来栄えになっていると思う。日本の技術力が世界に広がっていくことに、マイクロソフト日本法人として貢献できれば幸いだ」とエールを送った。

0 件のコメント:

コメントを投稿